生命科学楽しみ隊

生命の持つ不思議や神秘に魅了されております。ここでは生きた証として残しておきたい知識を記しています。

遺伝子とDNA、ゲノムと染色体の違い

 

私は、大学で生命科学を、大学院でさらに狭く分子生物学という学問を学んできました。

しかしふと、人に遺伝子とDNAとゲノムと染色体、それぞれ何が違か聞かれたとき、具体的に何がどう違うかを簡潔に説明できるかな、と思いここに記しておこうと思いました。

卒業後は、分子生物学の知識をほとんど使うことのない仕事をしているため、特にこれからの生活でこういった内容の質問が来ることはまあないだろうなとは思いますが、生命科学という分野は好きなので一応。

 

 

遺伝子とDNAは同じようだけど違うもの

まず遺伝子とDNAの違いですが、簡単に言うと、遺伝子は塩基配列でDNAは核酸、という感じです。

電車に例えると、東海道線新幹線N700系、という全体がDNAで、東海道新幹線N700系の5号車、という一つの車両が遺伝子というイメージです。

 

まず、DNAは、デオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid )の略称で、要は核酸なのです。

全長は2mほどにもなり、その核酸を構成しているのが「アデニン、チミン、グアニン、シトシン」という4つの塩基です。

これらが2重らせん状に結合して核酸(DNA)を作っています。

そして、DNAは遺伝情報の設計図とよばれていて、遺伝子をたくさん格納しているのです。

基本的にDNAは核内に存在しますが、細菌や酵母などでは核外にDNAが存在することもあり、その核外に存在するDNA分子の総称をプラスミドといいます。

これは目的遺伝子を挿れることができるため、遺伝子工学では必須の存在です。

 

 

遺伝子(gene)の由来となっている genesis という単語は、ギリシャ語で起源を表す語句です。

人は、受精卵という一つの細胞が起源となり、胎児→新生児→幼児→成人へと発生し人間個体として出来上がります。

そして、両親から受け継いだ遺伝子の情報によって「唯一無二」の人間として出来上がるのです。

遺伝子は、核酸のように遺伝子物質的なものがあるわけでなく、DNAを作りあげている塩基配列の中で、「ここからここまでの塩基配列が〇〇遺伝子」といったように、塩基配列のある一定区間のことを指します。

なので、一つのDNAの中にいくつもの遺伝子が含まれているのです。(遺伝子の単位をオペロンという)

 

 

遺伝子が発現するってどういうこと?

DNA上にいくつもの遺伝子が並んでいるのが分かりましたね。

では、遺伝子が発現するとはいったいどういうことなのでしょうか。

 

DNA上の遺伝子は、色々な力により制御されていて、今ここで使う遺伝子と、使わない遺伝子、のように分けられ、使うものだけが発現します。

この「発現」は、遺伝子の情報に従いタンパク質を作る、という意味です。

 

色々な力により発現することが決められた遺伝子は、また別の色々な力によりその遺伝子に書き込まれた情報を読み取られ、さらなる色々な力によりタンパク質が作られるのです。

 

自由研究で使えそうな簡易作成キットみたいな感じですかね。

例えば、その遺伝子(作成キットの説明書)に「コラーゲンの作り方」が書いてあれば、コラーゲンというタンパク質が出来上がるのです。

 

実際に「色々な力」とは何かとか、具体的にどうやってタンパク質ができあがるかはまた別の記事で書くので、ここでは割愛させていただきます。

 

 

ゲノムと染色体の違いについて

先ほどは遺伝子とDNAの違いでしたが、ではDNAとゲノムの違いは何でしょう。

これはちょっと難しい気がします。

ゲノムとは、「DNAの塩基配列の集合」と専門書に書いてあることが多いですが、いや塩基配列の集合がDNAやん、という感じなのですよね。

 

私は、ゲノムとは概念?的なものだと捉えていて、DNAに含まれる遺伝子の遺伝情報などすべてを含めた全体のことをまとめてゲノムと呼んでいるのかなと思っています。

遺伝子は塩基配列、DNAは核酸、ゲノムはDNAに含まれる遺伝情報全部、みたいなイメージです。

ヒトゲノムといえば人が発生する際に関わる遺伝子やその情報すべてを指し、クマゲノムであればクマが発生する際に必要な遺伝情報すべてを指します。

 

 

では染色体は何なのでしょうか。

染色体は、全長2mもあるDNAがコンパクトに収まったものをいいます。

まず、全長2mもの鎖を核内に収めるためには、小さくしなければいけません。

夏場に羽毛布団をしまうために圧縮袋に入れておくのと同じです。

 

DNAをコンパクトにするために、まずヒストンという駒みたいなタンパク質を用意します。

そこにぐるっとDNAを巻きます。一つのヒストンタンパク質にDNAが巻かれたものをヌクレオソームといいます。

さすがに2mもあるとヒストンタンパク質は一つでは足りません。

そのためたくさんのヒストンタンパク質を用意し、次々にDNAを巻いていきます。

この無数のヒストンタンパク質にDNAが巻かれている構造をクロマチンといいます。

そして、このクロマチン構造をとったDNAがギュっと凝集したものが染色体です。

ややこしいですよね。

 

染色体の数は生物ごとに異なっていて、ヒトの場合は46本の染色体があります。

2本が1対になっているため、23対ですね。

22対(44本)は常染色体と呼ばれるもので、1対(2本)は性染色体です。

性染色体はXXのセットの場合が女性、XYのセットの場合が男性となります。

性染色体は男女の性を決定する遺伝子が含まれたDNAですが、それ以外の遺伝情報が入っているDNAが常染色体です。

 

さすがに複雑な構造を作り上げるためには染色体が一つでは足りないみたいですね。

常染色体の種類(一番目とか二番目とか)により含まれる遺伝子が異なり、一つの細胞に性染色体を含む46本の染色体が詰め込まれ、「ヒト」というパックになっているのです。

さすがに複雑な構造を作り上げるためには染色体が一つでは足りないみたいですね。

 

 

構造や部位、物質一つ一つにきちんと名前がついていることに感動しますし、まだまだ分からないことも多いため、これからも新たな発見に出会っていきたいなと思います。

ヒトの遺伝子なんて使われていないのにずっと置いてあるものもあるらしく、その部分は進化の過程で退化した部位などと言われていますが、そういうのが発現できたら違う生物になったりするのかな、と不思議です。

 

 

今回はこれで終わります。

お読みいただきありがとうございます。

 

 

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