ヒトの場合、一つの受精卵が分裂に分裂を繰り返しヒトという個体になります。
細胞が分裂するときは、その細胞がもっているDNAとまったく同じものを複製し、新たな細胞として生まれます。
例えば、肝臓では肝細胞という種類の細胞が分裂(複製)し、新たな肝細胞が生まれますが、血液などは一つの幹細胞から白血球、赤血球と別の細胞が生まれます。
これは分裂ではありますが、別のものになるという意味で「分化」といいます。
今回は、分化ではなく分裂時にどうやってDNAが複製されていくかをまとめていきたいと思います。
複製起点で複製の準備を行う
DNA複製は一つの染色体で一セットで、真核生物と原核生物で複製方法が異なっています(今回は真核生物であるヒトの場合の説明です)。
複製は、DNA上の複製起点と呼ばれる場所(二本鎖を一本鎖にほどきやすい配列)からはじまり、複製が始まる前に様々な分子が集まり複合体を形成します(複製前複合体:プレRC)。
真核生物の場合、情報が多いためDNA上に多数の複製起点が存在し、数時間で複製を完了できます。
(一か所だけだったら一本読み込むのに一ヶ月かかってしまうとかなんとか)
ヒトのDNAは二本鎖になっていて、それらがクルクルと二重らせんを形成しています。
3Dプリンターのようにそのままスキャンできればよいのですが、それができないので、まず一本ずつに分け、それぞれどのような塩基配列をしているかを読み込んでいきます。
そしてその情報をもとに、新たな鎖を合成していくのです。
情報の読み取りは相補的なもので、元がアデニンならそれと対になるチミンの塩基になります。
さらに相補的な鎖の合成ができると、今度はそれをもとに二本目の鎖が出来上がるので、もとのDNAと同じ塩基配列を持つ二本鎖DNAが出来上がるというわけです。
新たなDNA鎖の延長を行うのはDNAポリメラーゼで、さらにDNAの合成にはRNAプライマーも必要になります(RNAとありますが、複製が進む中でDNAに置き換えられる)。
そのため、複製起点の複合体にはDNAポリメラーゼ(α)とRNAプライマーの合成を行う酵素プライマーゼもくっついています。
あ、そうです。
真核生物のDNAポリメラーゼにはいくつか種類があり、複製段階により入れ替わりで使い分けています。
合図をもとに複製が開始される
複製起点に複合体を形成し、複製の準備ができたら、複製にふさわしい細胞周期がくるのを待つだけです。
複製起点の複合体には、DNAポリメラーゼ(α)と、プライマーゼが結合しているといいましたが、それ以外に増殖細胞核抗原(PCNA)という分子も結合しています。
複製にふさわしい時が来ると、このPCNAにそれを知らせる複製因子C(RFC)という因子が結合し、複製が始まります。
DNAポリメラーゼ(α)は、複製開始前にプライマーゼを結合させRNAプライマーを合成するのにはたらいていると考えられていて、実際に複製が始まる際はDNAポリメラーゼ(δ)に置き換わり、全長を複製していきます。
複製の初めは、DNAヘリカーゼという酵素が、二本鎖DNAを一本鎖にペりぺり開いていきます。
一本鎖に開かれた状態は、フォークのような形をしていることから複製フォークと呼ばれています。
DNAの末端はそれぞれ3’(3ダッシュ)、5’(5ダッシュ)と呼ばれていて、一本鎖の3’側からその情報を読み取り新たに合成されていく鎖をリーディング鎖といいます。
この際、もとの一本鎖DNAは3’側に抜けていきますが(ベルトみたいなイメージ)、もう一本の5’側から合成しているラギング鎖では、もとのDNAを合成と同じ方向へすり抜けさせることができません。
そのため、短く断片的に合成し、それをあとでDNAリガーゼがつなげる(共有結合)というやり方をしているのです。
この短い断片を発見者の名にちなみ、岡崎フラグメントとよびます。
複製の終結
開始時は複製起点がありましたが、終結時には目印となる終結配列なるものがありません。
その代わり、複製起点が多数あるので、一つの起点から始まった複製は、鎖が延長していくと隣の複製領域(レプリコン)にぶつかります。
それが合図となり複製が終結するのです。
だいたい一つの染色体で20~80個ほどのレプリコンがあり、それがすべて複製されると、細胞分裂の次の段階へ進み、細胞が分裂します。
あ、最後に、真核生物のDNAポリメラーゼはもう一つDNAポリメラーゼ(ε)というのがあり、これはミトコンドリアにだけ存在し、ミトコンドリアのDNA複製時に使われています。
今回はこれで終わります。
お読みいただきありがとうございます。