生命科学楽しみ隊

生命の持つ不思議や神秘に魅了されております。ここでは生きた証として残しておきたい知識を記しています。

人の体内でブドウ糖や果糖、脂肪からエネルギーが産生される仕組み

 

前回の記事消化と吸収の仕組み

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でも説明しましたが、糖質はこれ以上分解できない単位であるブドウ糖グルコース)や果糖(フルクトース)に分解されてから吸収されます。

腸から血液を通り肝臓に行き着いた糖は、全身のエネルギー源になるため、再び血液を通し全身に送り出され、各所の細胞たちの中でエネルギーに変換されます。

 

今回はその仕組みを説明していこうと思います。

 

パソコンならばフルワイド、スマホなら横向きにするとズレなく見られます!!(多分)

 

 

インスリンの作用でブドウ糖グルコース)が解糖系に取り込まれる

糖質を摂取すると、正常な糖代謝の場合インスリンというホルモンが分泌され、それが細胞表面のインスリン受容体に結合し、血液から細胞に糖を取り込むよう指令が下されます。

すると、糖の輸送体が細胞表面に集まり、血液中に流れている糖をほいほい細胞内に取り込んでいきます。

 

ここでいうエネルギーはATP(アデノシン3リン酸)というもので、一つのグルコース分子からは、解糖系で2ATP、ミトコンドリア内の電子伝達系で38ATPが作り出されます。

 

取り込まれたグルコースは解糖系に組み込まれ、補酵素であるNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と、NADが水素原子を2個受容したNADH2の補助を受けながらエネルギー産生反応が進んでいきます。

 

 

解糖系での反応

 

グルコース

↑↓(ATP→ADP)-1

グルコース6リン酸

↑↓(ATP→ADP)-1

フルクトース6リン酸

↑↓

フルクトース1,6ビスリン酸

              ↖↘

↑↓              ジヒドロキシアセトンリン酸

              ↙↗

グリセルアルデヒド3リン酸

↑↓

1,3ビスホスホグリセリン

↑↓(ADP→ATP)+2

3ホスホグリセリン

↑↓

2ホスホグリセリン

↑↓(ADP→ATP)+2

ホスホエノールピルビン酸

ピルビン酸 ⇆ 乳酸

 

グルコースからホスホエノールピルビン酸までの反応はすべて可逆的ですが、ミトコンドリアの電子伝達系に入るために、ホスホエノールピルビン酸はピルビン酸を経てアセチルCoAとなりますが、この反応は逆行不可でピルビン酸からグルコースを産生することはできません。

 

また、ピルビン酸ができる時、NADがNADH2に還元されて反応が終わりますが、そのままではNADが足りなくなり解糖系の反応が終わってしまうため、ピルビン酸を乳酸に還元することによりNADH2NADに戻します。

 

 

ミトコンドリア内の電子伝達系での反応

解糖系でできたピルビン酸は、アセチルCoAとなり、ミトコンドリア内の電子伝達系に入ります。

ここはクエン酸回路と呼ばれていて、アミノ酸代謝も行われています。

 

解糖系から遥々やってきたアセチルCoAは、

クエン酸→イソクエン酸→αケトグルタル酸→スクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキザロ酢酸→アセチルCoA ... とくるくるし、その間に38ATPを産生します。

 

 

糖新生に必要なリンゴ酸シャトル

ここまでがグルコース(糖)からエネルギーが産生される過程でしたが、この経路は逆行してグルコースを作り出すこともできます(糖新生)。

先ほど、ピルビン酸からの逆行ができないという話をしましたが、糖新生ではリンゴ酸がリンゴ酸はリンゴ酸シャトルという秘密兵器を使いホスホエノールピルビン酸になるので、実質逆行可能なのです。

 

また、糖新生では乳酸やアミノ酸グリセリンやプロピオン酸などの分子も利用されます。

 

肝臓や筋肉に蓄積されているグリコーゲンが分解されてエネルギーが産生されるときは、

グリコーゲンがグルコース1リン酸を経てグルコース6リン酸となり、先ほどの解糖系に組み込まれていきます。

 

 

ケトン回路からのエネルギ産生

さて、ここまででは糖だけの話でしたが、実は人間の体も野生動物同様脂肪からエネルギーを産生することもできます。

それがケトン回路と呼ばれるものです。

 

糖が枯渇してくると、脂肪からケトンが合成され、アセチルCoAを経てミトコンドリア内の電子伝達系に入り、エネルギー産生が始まります。

しかしこれは非常時のみ働くいわば予備電源のようなもの(少なくとも私の現段階の認識では)で、これを利用したダイエットなどもうたわれていますが、本来の糖代謝に影響はでないのかなあと心配です。

 

 

果糖(フルクトース)の代謝について

先ほどはブドウ糖グルコース)の代謝を説明しましたが、では果糖(フルクトース)はどのように代謝されているのでしょうか。

こちらは、いまだ分かっていない部分も多いようです。

 

果糖の代謝代謝経路がいくつかあり、なんだかんだ解糖系に組み込まれるものと、中性脂肪になるものがあります。

先ほどの解糖系に果糖がどう組み込まれているかを書き加えていきます。

 

グルコース

↑↓(ATP→ADP)-1

グルコース6リン酸

↑↓(ATP→ADP)-1

フルクトース6リン酸  ←  フルクトース → (肝臓に)フルクトース1リン酸

↑↓                                

フルクトース1,6ビスリン酸                      ←↓

              ↖↘                 ↓

↑↓              ジヒドロキシアセトンリン酸    ←↓

              ↙↗                  

グリセルアルデヒド3リン酸  ←――――――↑――――― グリセルアルデヒド

↑↓                                                                           ↑                                       ↓

(略)               グリセロール3リン酸 ← グリセロール

                       ↓

                    中性脂肪

 

 

 

ブドウ糖と果糖を同時に摂ると、インスリンの作用で果糖からの中性脂肪の合成が促進されるという話も聞いたことがありますが、それは中性脂肪になる割合が増えるのか、ただ反応のスピードが速まるだけなのかまでは分からないです。

果糖はよくないと言われていますが、どうよくないかをもっと分子レベルで知れたらいいなあと思います。

また、果物を主食にしている地域の人と日本人では代謝系も少し違うのかな?とも疑問です。

 

もしご存じの方がいらっしゃれば、これに書いてあったよと文献を送り付けていただけると嬉しいです。

 

 

では今回はこの辺りで終わります。

お読みいただきありがとうございます。

 

 

 

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